カルチャーショック!?寝台列車プールヴァ急行 Poorva Exp 乗車体験記

2018年12月19日現地情報

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プールヴァ急行乗車体験記 アイキャッチ

世界に冠たる鉄道大国、インド。現地に暮らす人々はもちろん、旅行客にとっても主要な移動手段のひとつです。中でも寝台列車(夜行列車)は、移動ついでの観光としてツアーのプランにもよく組み込まれています。

筆者は2017年秋に初めてインドを訪れ、アグラ~ヴァーラーナシー(バラナシ/ベナレス)間の移動に寝台列車・プールヴァ急行(Poorva Express)を利用しました。これが旅行中で一、二を争う鮮烈な体験となったため、記事にまとめておこうと思った次第です。

本記事では、スーツケースを転がしてパッケージツアーでインドを旅した筆者の、初心者目線の体験と情報をありったけご紹介していきます。同じくこれからインドへ初心者旅に出かけようという人の、イメージの手助けになれば幸いです。

はじめに

本記事では次のような情報をご紹介しています。

  • ツンドラ駅の様子
  • プールヴァ急行の乗車体験記
  • スーツケース+ツアーの初心者旅で寝台列車に乗る人向けのアドバイス

逆に、以下のような情報は載っていません。

  • チケットの買い方
  • 駅で乗車ホームや遅延などの情報を得る方法
  • 乗り方、降り方
  • バックパッカー目線の情報

私は現地ガイド付きのパッケージツアーを利用してインドを旅しました。寝台列車に関わる手続きはすべて旅行会社にお任せしており、当日もガイドさんに案内されるがままついていくという状況でした。そのため、上のような実践的な部分はまったくわかりません。そういった情報をお求めの方は、ガイドブックや、インド慣れした上級者さんのブログを当たってみてください。

座席のクラス一覧

インドの列車の座席は8つのクラスに分かれています。詳細はガイドブックや上級者さんのブログを参照していただきたいのですが、本記事でもちょくちょく以下の用語を使っていくため、基礎知識としてご紹介しておきますね。

  • 1A: エアコン付き2段寝台、個室
  • 2A: エアコン付き2段寝台
  • 3A: エアコン付き3段寝台
  • SL: 3段寝台
  • EC: エアコン付き座席、広々
  • CC: エアコン付き座席
  • 2S: 座席
  • GN: 予約不要、混沌

私が乗ったのはデリー~アグラ間の日中移動でCC、アグラ~ヴァーラーナシー間の夜間移動で2Aでした。前者については以下の旅行記をご覧ください。本記事では後者についてお話ししていきます。

列車の基本情報

  • 日時: 2017年9月21日(木)夜~22日(金)早朝
  • 列車名: Poorva Express(プールヴァ急行)
  • 乗車駅: Tundla Junction(ツンドラ駅)
  • 降車駅: Mughal Sarai Junction(ムガール・サライ駅)
  • クラス: 2A

PoorvaとTundlaの正しい発音がわからないのですが、本記事ではとりあえず上のようにカタカナ表記していきたいと思います。また、ムガール・サライ駅は別名「Pt. Deen Dayal Upadhyaya Junction」とも言うそうです。

ツンドラ駅はアグラ近郊、ムガール・サライ駅はヴァーラーナシー近郊の駅です。

▼ツンドラ駅

▼ムガール・サライ駅

ツンドラ駅の様子

ツンドラ駅(Tundla Junction)はタージ・マハルで有名なアグラの郊外に位置する駅です。これが結構ローカルな、というか、いわゆるディープなインドらしい雰囲気の駅で、ここに着いた時点ですでに内心「おお……」と思っていました。

ツンドラ駅に停まる寝台列車
ツンドラ駅に停車中の寝台列車。窓の向こうには人がぎっちり!

我々が乗るのとは別の列車がちょくちょく停まるのですが、その様子にぎょっとしてしまいました。車体に「SLEEPER CLASS」と書いてあるのに、中には人がぎっちり。どう見てもゆっくり寝られる感じではありません。

さらに当時、外は雨が降っていました。しかし目の前の車両の窓にはめてあるのは鉄格子のみ、ガラスはありません。それってつまり、思いっきり車内に吹き込んでくるのでは……?

実はこのとき、私たちは何クラスの車両に乗るのか聞いていませんでした。もし目の前のこれだったらどうしようと、割と真剣に胃に来たのを覚えています。(結果的には違ったのですが)

おそらくですが、上の車両はSLクラスだと思われます。エアコンなし、3段寝台の車両ですね。要予約のクラスのはずですが、チケットを持っていない人も普通に乗り込んでくるので上のような状態になるようです。治安はあまりよくなさそうですね……。

さて、話を自分たちのほうに戻していきましょう。

目的の列車が1時間以上遅れ、ずっとホームのベンチで待ちぼうけしていたのですが、すぐそこで野良犬が小鳥をむしゃむしゃ食べていて「うわ~、こっち来るなよ……」などと地味にはらはらしていました。(インドの野良犬は狂犬病のおそれがあるので触れると危険です)

待っていて気づいたのが、構内アナウンスの類が全然ないこと。デリー駅では英語で案内が流れていましたが、ここでは一切流れなかったような。どれくらい遅延しているとか、乗車ホームの変更とか、そういう情報はみんな一体どこで仕入れているんだろう……。

ツンドラ駅のホームの時計
ツンドラ駅のホームの時計。列車を待ち続けて1時間が経過。

プールヴァ急行の到着、乗車

そんなこんなで不安な気持ちを抱えたまま1時間以上待ち続けた末、ついに列車が到着しました。それが目的の列車なのかどうかさえ、ガイドさんに言われなければわかりません。一体何をもって判断しているんでしょうか。

ホームにするすると入ってきた列車を見て、ガイドさんがおもむろにこっちだと手招き。言われるがままついていき、長いホームを延々と進みます。乗り遅れないようスーツケースを転がしながら小走り。緊張の瞬間です。

後々知ったのですが、列車の編成、つまりどのクラスの車両がどこに停まるかというのは、実際に来てみるまでわからないようです。車体に書かれたクラス名を目視で確認し、急いで移動して乗り込むということなんでしょうか。本当に自力じゃ乗れる気がしません。

なんとか無事に目的の車両に乗り込み、ガイドさんが座席の場所をチェックします。

ガイドさん

ガイドさん

ここと、あっちと…… あと二人は向こうの車両ね。

席まとまってないんかい! 予約のタイミングとかいろんな都合があったのかな……。

結局、席は四人ともばらばらでした。些細なことといえば些細なことですが、何から何まで初体験の自分としては、仲間と分かれ分かれになるのは心細かったです。

プールヴァ急行 2Aクラスの様子

さて、ここでプールヴァ急行2Aクラスの車内の様子を簡単にご紹介してみます。当日は緊張のあまり写真を撮る余裕がなかったため、イラストをご用意してみました。一年以上前の記憶を頼りに描いたものなので正確性は保証しません! 雰囲気だけつかんでいただければと思います。

プールヴァ急行 2A車両図解
プールヴァ急行、2A車両内部の(うろ覚えを多分に含む)図解。

以下、詳細をご説明していきます。

座席の作り

通路に沿うようにして上下2段、反対側には通路と垂直になる向きで上下2段×2、計6席が1セットになっている作りです。私が使ったのは通路側上段のベッドです。

席にはそれぞれ仕切りのカーテンがついています。寝るときにこれが一枚あるのとないのでは大違いです。3Aにはついていないそうなので、メンタル強度に自信のない方は2Aや1Aがおすすめです。

席の脇にある手すり兼はしごをよじ登って上段に上がります。下段のお客さんにうっかり足が触れないよう、地味に気を使いました。

席はビニール張りのクッションで、おのおの勝手にシーツや毛布を敷いてベッドを作ります。備品については後述します。

大きな荷物の扱い

スーツケースなどの大きな荷物は下段のベッドの下に入れ込みます。私が持っていたのは(いろいろと判断をミスった結果)90Lの大容量スーツケースだったのですが、サイズ的にぎりぎりでした。収まってよかった……。

ちょっと話がそれますが、インド旅のスーツケースや街歩きバッグはこういうのがおすすめ!というのを以下の記事で詳しくお話ししています。間違っても「大は小を兼ねる」で選ばないようご注意ください。

また、乗車中は大きな荷物から目が完全に離れてしまうため、荷物をベッドの足に括りつけるためのチェーンを用意しておくと安心です。私はこれを忘れてなかなかスリリングな思いをしました。

インドの列車はクラスによって治安の良さが大きく異なります。今ご紹介している2Aは寝台のクラスでは上から二番目、かなり安全なほうですが、むやみに油断するべきではないでしょう。私も次回は必ず持っていくつもりです。

小さな荷物の扱い

貴重品の入っている街歩き用バッグは、常に肌身離さず持ち歩きます。寝るときも盗られないよう、壁側に抱えるようにして寝ます。

乗車中、スーツケースなどの大きな荷物を開けることはできないので、以下のようなものはあらかじめ街歩き用バッグに移しておきます。

歯みがきセット

トイレの近くに洗面台があります。ただし、ここの水はきれいだと思わないほうがよさそうです。歯を磨くときは飲用のミネラルウォーターを使うとよいでしょう。

制汗シート

列車内で着替えることはできません。シャワーも当然ながらありません。とはいえ、一日たっぷり観光して汗をかいた状態のまま寝るのはちょっと……。そんなとき、制汗シートがあるとかなりさっぱりします。おすすめです。

小タオル

列車内の洗面台の水で顔を洗うかどうかはさておき、とりあえず一枚はあるとよいでしょう。

トイレットペーパー

列車内のトイレにはトイレットペーパーがありません。インド式の方法でできない人は必ず持っておきましょう。

インドのトイレ事情については以下の記事をご参照ください。

羽織るもの

おもに体温調節用です。エアコン付きの車両は寒いくらいに空調が効いているので、ないと困ります。

普通の長袖の上着でもいいですが、個人的に推したいのが大判のストールです。日中は日よけとして大活躍しますし、帽子と上着の二役を兼ねることができるので荷物も減ります。何かにつけて本当~~~に便利なので、男女問わずおすすめです。

靴用ビニール袋

街歩き用バッグと同様、脱いだ靴も盗難防止のため席に上げておきます。これはガイドブックやツアーの冊子には載っていなかった情報で、その場でガイドさんから教えてもらいました。

なので、土足を入れるためのビニール袋を用意しておくとよいでしょう。シーツ類が入っていた紙袋を使うという手もあります。

座席の様子と備品

プールヴァ急行の2A寝台
通路側上段のベッドの様子、足側

備品としてシーツ、タオル、毛布、枕が用意されています。席にもともと置いてあるんだったかな……? うろ覚えです。シーツはなんだかしっとりしていますが、不衛生な感じではありません。ベッドは自分で勝手に作ります。上の写真は作り終わった後の様子です。

写真左上、ペットボトルのホルダーがついています。反対側にもあったので計二つですね。無論、ペットボトルは私物です。

写真上にあるのはエアコンの吹き出し口です。めちゃくちゃ寒かったです。

プールヴァ急行の2A寝台
通路側上段のベッドの様子、頭側

頭側はこんな感じ。備品のタオルは枕カバーとして使いました。ネットに入っているのはシーツ類が入っていた紙袋です。

ムガール・サライ駅到着、降車

さてこの上段ベッドですが、ご覧いただいた通り窓がありません。最初は特に何も思わなかったのですが、乗っているうちに衝撃の事実に気づきました。車内アナウンスの類が一切ないのです。

窓がない。アナウンスもない。今どこを走っているのかも、どこに停まっているのかもわからない。これで一体どうやって目的の駅に降りるんだ……!?

一瞬、乗車時間で判断するのかなと思ったのですが、インドの列車が平気で何時間も遅れることは体験済みです。乗車時間は当てになりません。

幸い我々にはガイドさんがついていたので、「大体何時ごろに着くからそれまでには起きて支度しといてね」とあらかじめ言ってもらえたり、到着前に迎えに来てもらうこともできましたが、目的地が近くなったことがなぜわかるのか本気で謎でした。謎すぎたので聞いてみました。

ガイドさん

ガイドさん

窓から外を見てればわかるよ。

いやだからその窓がないんだって!

おそらくガイドさんが使っていたのは下段の席だったのでしょう。下段には窓がついています。とはいえそれは土地勘のある人だからできることであって、我々外国人観光客からしてみたら、窓があって外が見えてもはたして無事に目的の駅で降りられるかどうか。しかも夜行列車なのに……寝てるのに……。

謎は深まるばかりでしたが、ともあれ、ガイドさんのおかげで無事にムガール・サライ駅で降りることができたのでした。

まとめ

いかがだったでしょうか。インドの寝台列車・プールヴァ急行の様子を、私の個人的な体験の一部始終とともにご紹介してみました。

真面目に、この寝台列車が今回のインド旅行の中で一番腹くくった体験でした。とはいえ、振り返ってみれば案外そこまででもないように感じます。次回はきっともっと余裕を持って乗ることができるでしょう。ただしそれでも、自力で乗り降りできる自信はまったくありません。次も必ずインド慣れした人と一緒に乗ります。

ここまで読んでくださった方で、

  • これから初めてインドに行く
  • 初めてインドの寝台列車に乗る
  • 特段旅慣れていない
  • 不測の事態を切り抜ける力に自信がない

という人がいらっしゃいましたら、旅行会社にチケットを手配してもらい、当日は現地ガイドをつけることを強く強くおすすめします。どうぞよい旅を!

2018年12月19日現地情報

Posted by 真中ユエ